多読をするときに感じたキンドルのメリット

多読を始めて2年ちょっとが経ちます。紙の本を1年使ったあとキンドルを使ったため、デジタルデバイスの機能に感動しました。今日は自分が英語学習者としてキンドルを使ったときに感じたメリットをまとめてみます。

 

ふせんがいらない=ハイライト機能が便利

キンドルでは文字に指をあてると辞書機能が作動します。そのとき画面上のほうには辞書と一緒に「ハイライト」というボタンがでてきます。

ハイライトボタンを押すと、ハイライトしたものはメモとして一覧にまとめられ、いいなと思った表現、あとで見返したい表現などのストックが可能です。

ハイライトをした箇所はキンドル端末では上のように見え、スマホなどのアプリではハイライトをした箇所だけ表示されます。

キンドルをスマホで利用する場合、下の写真のように全文にハイライトをかけておけば、隙間時間に見返せるオリジナルの単語帳のように使え便利だと感じました。

また、この機能はライティングの勉強に役立ちました。ライティングに使えそうな表現をハイライトして貯め、英語日記を書くときに「こんな感じのこと言いたいんだけど、前に似た表現見たような気がする」と思ったときにハイライトを見返しています。

 

サンプル機能(なか見!検索)が便利

本が自分に読めるものかどうか見定めるときに便利な機能です。

子供向けの本なのに、読みづらいと思ったことありませんか? 私自身、子供向けの小説なら読めるだろうと目を通しても無理かもと思えたり、逆に大人向けの自己啓発でもこれなら読めるかも! と思えたりすることがありました。そこで読める・読めないと感じる基準を考えてみると、英文が自分の見慣れた文体で書かれているかと、わからない単語が多くないかにある気がします。

たとえばこれ、自己啓発に分類される有名な「チーズはどこへ消えた?」で読めるサンプル文の1か所です。

One sunny Sunday in Chicago, several former classmates, who were good friends in school, gathered for lunch, having attended their high school reunion the night before.

案外平易な文章ですよね? 実際のねずみがチーズを追いかける、本文というか物語の冒頭(サンプルには載っていない)もこんな感じです。

Once, long ago in a land far away, there lived four little characters who ran through a Maze looking for cheese to nourish them and make them happy.

私はmazeとnourishではじめからつまづきましたが、辞書の助けもあって、読み進めていけました。

サンプル機能は無意識にしてしまうジャッジが本当に正しいのか、それとも思い込みにすぎないのかを見極めるのに役立ちます。「読めないと思ってたけど読めそう」だったり、難しくても「これだったらもう少しがんばれば読めるかも」と思えたり、もしくは「翻訳書を読んだあとに読んだらわかるかも」というジャッジができたり、モチベーション維持も助けてくれる機能だなと感じています。

多読向きのレベル別の書籍からステップアップしたい、レベル別の書籍が楽しめない、初心者向けと書いてあったから読んでみたけど読めない、TOEICの目安点を参考に手に取ってみたけど読みづらい、と思うことがあったら試してみてほしいです。

目を通しておくことで、買った後の「失敗した~」を幾分か防ぐことができるのもありがたいです。

 

アプリでスキマ時間をうまく利用できる

多読時間をがっつり確保できないときや、多読の習慣化をうながすのに便利なのがアプリだと思います。スマホにキンドルアプリを入れておけば、通勤中やちょっと手が空いたスキマ時間に多読ができて便利です。

今まで多読を日課にし、毎日家で多読を10分、15分読んでいました。でも仕事から帰った後は疲れていて、読む気力がないことが多いです。そこで、スマホにアプリを入れて出勤中などに読んでみることにしました。行きと帰り5分くらいずつ読めば、今まで分の日課は簡単にクリアできます。あまり気の進まない日でも、まあ数文でいいから読んでみなよと、自分をだましだまし読み始めると案外読めちゃいます。

今までは「がんばってやる」感覚がどこかありましたが、「時間があるから読もうか」を積み重ねていく感覚に変わり、多読をすることへのハードルが下がりました。多読がうまく継続できないという方がいたら、アプリはいいプラットフォームになると思います。

 

多読との向き合い方を変えてくれたキンドル

多読を始めた1年は幼児書を延々と読んでいました。はじめは楽しかったものの、1年後には飽きました。そんなときキンドルのサンプル機能に救われ、同時に多読のやり方から読むものもキンドル導入前と後では、ガラッと変わっていきました。

多読におけるキンドルのよいところをまとめた投稿ではありますが、「多読へのアプローチもいろいろある」ということを自分の試行錯誤を示しながら同時に伝えたかったのだと思います。

もし幼児書に飽きてきたなあと同じように感じている人がいたら、サンプル機能を試してみてほしいです。読んでくださった方になんらかの「へー」と思う要素があったら幸いです。読んでくださってありがとうございます。

R.J Palacio著『Wonder』を読んで

1年近く前、紀伊国屋書店の店頭にずらりと一面並べられていたこの本。少し前に読んでみたところ、折を見てまた読み返したくなるような本でした。「Wonder」には、スピンオフ的な小説「Auggie and Me」という本もあります。先日両方を読了したので、今日は両方を読んで感じたことをまとめてみます。

 

あらすじ

主人公の少年は、生まれつき顔に障害がある10歳のオーガスト。本の中には、小さな子供が初めて彼のことを見ると怖がってしまう、なんていう描写もでてきます。顔の手術のため入退院を繰り返し、それまでは学校には行かずホームスクーリングをしていました。それが中等部の1年目になるとき、治療も落ち着き、オーガストの今後のことも考えて学校に行くことに決めます。けれど、見た目がみんなと違うオーガストの学校生活は大変なものでした。物語はオーガストの学校生活を、いろんな登場人物の視点を交えながら追っていきます。

 

物語の特徴の一つは、ストーリーが6人の登場人物の視点から描かれていることだと思います。一番最初は主人公のオーガストから始まるけれど、そのあとはオーガスト以外にもオーガストのお姉ちゃん、学校での「Welcome Buddy(翻訳では『案内役』)」を校長先生から頼まれたジャック、お昼に独りぼっちになってしまっているオーガストとランチを一緒に食べることで仲良しになったサマー、お姉ちゃんのボーイフレンド、お姉ちゃんの友達という風に話者が変わっていきます。話者が6人もいると読みづらそうですが、話者が変わるところで物語もスムーズに展開していくのでごちゃごちゃ感はないです。また話者が変わることで、それぞれの登場人物がどのように主人公のオーガストやほかの登場人物、学校のことを見ているのかも見えてきます。

 

カラフルな個性

本を読んで感じたことを一言で表現するとしたら「カラフル」でした。

本には、人が隠したくなる本音の部分がモノローグのなかで克明に描写されています。登場人物の寂しさや他者に対するあこがれ、うらやましさ…。そういった気持ちはときに登場人物間の関係性のこじれの原因にもなりますが、本のなかでは子供たちが紆余曲折を経て自分の気持ちに向き合って、相手に向き合って関係を修復したり、構築したりする様子が描かれています。

本を読んでいて、こじれにつながることがあるにせよ、自分の気持ちにまっすぐで正直な子供たちが輝いて見えました。子供たち一人一人の感じ方、個性がとてもカラフルに見え、それぞれの登場人物がボッと燃え出すエネルギーみたいなものを秘めているように見えました。

なんでだろうなあと考えたとき、大人になるにつれて自分がプラスもマイナスも含めて「大人」になってしまったからだろうなあと思いました。なんとなく気づきたくない自分の気持ちに蓋をしてしまったり、できるだけ衝突を避けようとしたり…。もちろんそれらはよい面もあります。でも、本を通じてまっすぐに自分の気持ちと向き合うことの大切さも、間接的に学んだ気もします。

 

本を読んで感じたことは、描写がリアルだなあということ。ああ、今オーガストがうけているのはこういう視線だろうなあとか、この追いやられる感じわかるわかるなあ、と容易に状況の想像がつきました。読者である自分自身の小学校時代はだいぶ昔なのに、読みながら過去のいやだったこと、つらかったことがフラッシュバックしたりと、読み手にこんなにリアルに感じさせたり、思い出させたるなんて、すごい描写力だなあと感じました。

だからこそ読み終わって一番強く思ったのは、「オーガストができるなら、私も頑張らなきゃ」でした。自分自身を知ってもらうことなく、容姿だけで判断され、かわかわれ、疎外感を味わう。子供はときに残酷です。だけど彼は、ひとつひとつの壁を越えていきます。それは一つには彼の周りの環境の良さに由来するところもあって、それに対しては、こんないい人ばっか周りにいることないよと感じたりもしました。それでも、途中から「ああ、この子すごいなあ」と純粋に一目置きながら本を読んでしまいました。架空の物語であるにも関わらず、です。

 

この本、2016年の課題図書らしいです。なので児童書のくくりになっていて、ひらがなも多いですが大人でも学ぶところが多い本だなと感じます。私の場合は、一つの状況に対して多くの人の視野を取り入れることで見えてくるものがあり、子供の見方、感じ方から学ぶことがありました。本が文庫になっていて、翻訳の語尾や調子がちょっと違ったら、もっと多くの人に届く物語だと感じます。

 

Wonder本編だけでも面白いけれど、スピンオフ的な「Auggie & Me」も面白いです。こちらでは、Wonderの本編ではそこまでメインロールを担っていない3人の登場人物の「本音」の部分が一人ずつ深堀りされていきます。示唆的だけどしつこくなくて、短編として楽しめるお話です。

 

英語の多読をやっている人がいれば、おすすめです。読みやすくて、日記などで使いやすい表現がざくざくありました。よかったらどうぞ!