西野亮廣著/『魔法のコンパス』を読んで

キングコング西野さんの「魔法のコンパス」を先日読み終わりました。5月に角川から出版された文庫版ではなく、2016年に主婦の友社から販売された単行本の本です。今日は感想を書いてみます。

 

まずどんな本かというと、ちょっと今回はAmazonの紹介文を引用させてもらいます。

 

漫才師、絵本作家、イベンター、校長、村長、ついには上場企業の顧問にも就任! 肩書きを自由に飛び越える芸人界の異端児が書く“レールからハミ出す人のためのビジネス書”。「自分だけの仕事の作り方・広げ方」、「本当のお金の話」「常識の覆し方」「エンタメの仕掛け方」まで必読!

 

本を読んで一番印象に残っているのは、西野さんの物事への「向き合い方」です。それは西野さんの行動力と、ものごとを前向きに転換させていくところ、と言い換えられると思います。

 

そのなかでも一番印象に残っているのは、モリで突き刺していく話でした。西野さんは2013年の1月「来月、ニューヨークで個展をしたい」と言い出したそうです。アテやノウハウもない。英和辞典片手に、ニューヨークのギャラリーに片っ端から80社ほど、連絡をとったそうです(まずここまでの、この行動力すごい!)。直前にも関わらずギャラリーは見つかりました。でも、ギャラリー費用、渡航費、宿泊費、設営・運搬費などのお金の問題が残っています。西野さんは当時日本にはいってきたクラウドファンディングを使うことを思いつき、支援の方法としてSNSを選びます。「キングコング西野」でエゴサーチをして、自身についてリツイートしている人をリストアップして、700~800人に「はじめまして、キングコングの西野です。実はこの度、クラウドファンディングという…」という風に、直接メールを送っていったそうです。これは「拡散希望」と書かれたリツイート数が昔にくらべて少なくなっているのを見て、みんな大多数に向けて投げられた情報には反応しなくなり、SNSは今までの拡散装置としての役割は果たさなくなっていることに気づいて行ったということ。実際これが当たってお金は集まり、個展をやるときの集客にも現地にいる人に向けて、同じように「はじめまして…」と連絡を取ったそうです。

 

この話は、【SNSは拡散ツールではなく、個人をつなげるツールであり、大多数に網を張るより、1対1を繰り返すほうがよい】という趣旨の内容を伝えるために紹介された話です。だけど私は、単純に芸能人がモリで突き刺す手法を使うということにびっくりし、アメリカのギャラリーに自分でダイレクトメールを送ってしまえる事実に驚きました。私は相手がどう考えるかとか考えて、結局なんにもしないだろうなあ、そしてそのまま終わるだろうなあと思ってしまったので…。

 

あと、もう一つすげえなあと思ったのは、西野さんのネガティブ要素のある状況を転換していける力、そして言ったことを実行する力です。ハロウィン翌日のゴミ拾いイベントや、負けエンブレム展の話が印象に残っています。いずれもネットなどで取り上げられたから知っている人も多いかもしれないですね。ゴミ拾いイベントは、渋谷のハロウィン翌日のゴミが大量なことに対して、「ゴミを出すな」と押し戻すのではなく、ゴミが出ることを逆手にとってゴミ拾いイベントを行い、出たゴミでアート作品を作ろうというもの。そして負けエンブレム展は、オリンピックの新しいエンブレムを募集する際、最終候補に落選した方を対象に、西野さんのブログで大賞を決める『負けエンブレム展』を開催するというもの。落選した作品にいいものがあったのではないか、デザインで生計を立てている方にとっては相当の意気込みで挑戦したもので、それがただ埋もれていくのはもったいないということで始まったものです。

 

多くの人が目の前の出来事をそのまま受け入れるのに対して、西野さんは人を巻き込んで、自分にできる行動を起こし目の前の現実を変えていきます。この上の話の流れのなかの文章ではないのだけど、本にはこんな文章があって、この文章が西野さんの考えの根幹を伝えているなと思いました。

 

そこに自分が絡んでいるかどうかなんて、もはやどうでもよくて、とにもかくにも世の中が今よりも楽しいもので溢れたら、僕にとっては、それが一番イイ。

 

いつだって僕は自分のためにやっているんだけれど、そのことが巡り巡って誰かの救いになっていたりすることがある。

 

行動力の話にしても、物事の見方を転換させていく話にしても、いずれも紹介したのは内容の一部にすぎず、本にはほかにもいろんなアプローチで西野さんが考えたこと、実際に行ったことが紹介されています。西野さんの場合、考えていること、実際に行ったこと、ネットの情報がセットでまとめられていることが多く、順を追って流れを整理しやすいです。それから言ったことを実現していくから、言葉がしっかりと響いてきます。

 

話が少しずれるのですが、私にはSNSやブログでフォローしたりしている人のなかで、その人の動向が気になるけれど、その人のことをまっすぐにフォローできない人が何人かいます。斜に構えて冷めた目で見ているのに、気になるから見ちゃう…という。みんな、努力して自分のやりたいことにチャレンジしている人たちで、やってることはすごいんだけど、まっすぐに肯定できないのです。西野さんの本を読んだとき、その人たちのブログを読んだときと感覚が似ていることに気づきました。なぜ肯定できないのだろうと考えてみると、そこにあこがれやうらやましさの気持ちがあることに気づきます。

 

本を読んで感じたことを一言でまとめると、「正しさ」だと思います。本を読んでいると、俯瞰で周りをながめ、自分の持っているものを分析し、長けている部分を活かすためにコツコツと努力している様子が伝わってきます。それから、ハロウィンあとの掃除や負けエンブレム展のように、マイナスの出来事をプラスに変えたり、世の中を今より楽しいものにしようとしている姿も読み取れます。そして実行に移すためには、ガンガンに行動していくストーリーも語られています。それらの話を「正しい」と言っていいのかはわからないですが、今よりもよりよい方向を目指し、有言実行で解決策を自分で考えながら向かっていく姿は、まっすぐで、正しい考え方だなあと感じました。たぶんまっすぐに肯定できない気持ちは、自分のあまりみたくないダメなところを、西野さんの文章を読んでいると思い出してしまうからなのかな、と感じました。

 

私はテレ東のゴットタンの企画は大好きですが、西野さんのブログをちらっと読んで西野さんをジャッジしていた節がありました。でも今回、本を読んでみてそんな風に考えてるんだ~と思うことがいろいろありました。本人の思いの根幹をたどらないと、だめなんだなと思い知らされた1冊でした。

 

就活をしている学生や就活前の学生の方で、今の卒業して就活して…という流れに疑問を抱いている人、何かを変えたいけど具体的に何を変えればいいのかわからない、という人には参考になる情報が多い気がする本でした。

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